ここではない「どこか」を求めて──転職面接で問われるもの

先日、ある上場企業の幹部面接に同席しました。
(弊社では可能な限りこのプロセスに立ち会い、候補者と企業のあいだで相互理解を促す役割を担っています)
候補者は営業部長として十分な実績を持つ人物。面接は営業戦略や事業展開を巡る知的な応酬となり、好感触で終わるかに見えましたが、結論は保留。判断は候補者に委ねられました。
面接後、社長はこう語りました。
「能力、経験ともに申し分ない。ただ、こちらの描く未来と、本人のキャリアビジョンが合致しているかどうか、そこに確信が持てなかった」
実際、候補者は「これから何を目指すのか」という問いに対し、明確な言葉を示せませんでした。
面談では「迷い」は許容されますが、面接では「判断の放棄」と見なされます。
私たちエージェントとの面談では、方向性が曖昧な状態でも問題ないのです。
むしろ、転職における「目的」や「前提条件」を言語化するプロセスは、我々との対話によってこそ形作られていきます。
ですが、企業との面接では事情が異なります。
特に知名度の高い上場企業や、事業拡大フェーズにある成長企業においては、面接は「選抜の場」です。
その視点から見れば、「迷い」はすなわち「リスク」となります。
面接は、「自分が何をしたいのか」「なぜその企業なのか」を端的に語る場です。
それが曖昧なままでは、企業は「他の候補者にしよう」と判断するのが合理的なのです。
たとえば──
「営業とマネジメント経験を通じて収益に貢献してきた。今後は事業全体を俯瞰し、経営に近い立場で成果を出したい」
あるいは、
「選定の軸は、提供価値の高いプロダクトと風通しのよい組織風土。社会的課題に向き合いながら、経営層と対話できる環境を求めている」
上記は回答一例で、内容そのものの「正しさ」よりも、自己認識の明確さが重視されます。
企業はその言語化能力を通じて、「この人物は、当社の未来に加わる意志があるか」を測っています。
転職希望者の中には、「今の仕事ではない、どこか別の場所で何か新しいことがしたい」と漠然と語る方がいますが、組織のトップには届きません。
企業は、自社の課題に具体的に貢献してくれる人材を求めており、理想論や感情論に耳を傾ける余裕は現実的にはありません。
【自分自身を客観的に分析し、現実的な言葉で将来の構想を語ること】
これは、多くのビジネスパーソンが日々の業務で当たり前のように行っているはずですが、転職活動になるとその“当たり前”が揺らぎます。
「転職は、職業的判断と私的な願望が交差する場」だからかもしれません。
仕事であると同時に、「人生の選択」でもあるからこそ、論理が曖昧になり、準備不足が露呈してしまう事があるのです。
未来は、準備を尽くした方にしか開かれません。
転職もまた、「準備された意思」によってのみ成功します。
キャリアとは、「正解のない問い」に挑み続ける営みです。
もしご自身の現在地を見直したい方は、ぜひ一度、弊社にご連絡ください。
私たちと共に考え、よりよい人生を手に入れましょう。
エグゼクティブディレクター
小黒力也